前頭葉障害

前頭葉は多様な機能を担っている。動機づけ、覚醒を調整する。planning。感覚情報の取捨選択。それらを基に、脳の各組織や身体組織をプランに応じて組織している。その他にも内言による思考、意識。(随意的)注意。ワーキングメモリーなどにも関与している。

前頭葉障害では目的活動において行動や注意を保ち続ける事が難しくなる。言語的指示や誘導に従うことができず、他の刺激に容易に反応し、行動が支離滅裂に陥る。動けない重度な前頭葉障害では抵抗症に陥り、筋活動は同時収縮が目立つ。抵抗症や同時収縮により他動運動に対してstretch paineが起こりやすい。痛みは強く持続する傾向があり、四肢の屈曲拘縮を招く。

 人には生得的に”おやなんだろう反射”がある。”おやなんだろう反射”は外敵や環境の変化に対して生存率を高めるためる機構で、新規の予期しない周囲の変化に対して注意を向ける原始反射がある。

 人は常に目的を持ち続けて存在している。目的を達成するために、不必要な刺激はゲーティングコントロールによって排除される。目的を持ち続ける事をここでは定位とする。

 前頭葉障害では不必要な刺激を排除することができず、新規の刺激に容易に反応してしまう。目的を保持し続けること、定位が難しくなる。

 一方で目的活動に応じて人は身体図式を変える。自転車に乗る身体と椅子に座って本を読む身体とは全く異なる。前頭葉障害ではステレオタイプの神経活動による同時収縮や麻痺などによる身体的阻害因子に引きずられ限定的な姿勢の固定に陥り、身体図式を変えることが難しくなる。

 さらに、我々は周囲のことを”既に捉えている”身の回りに色々な変化が起きても、たいてい驚かない。これから起こることの多くは”予測されている”ためである。前頭葉障害ではこの予測活動が困難になっている。周囲や自己の部分に反応し全体を捉えられない。捉えられていないところの刺激は予期されていなく、たいてい驚き、理解できず、逃避や拒否を引き起こす。

 前頭葉障害への関りでは、予測を促し、注意、定位を保ち続けられるよう援助が必要である。理解が得られるよう、目的と結果が明確な場面を設定する。

 何もしていな時よりも、目的活動の場面で、最も良く自己を捉えられる。周囲のことも同様である。

 言語指示は効果がない。偏った知覚、注意が他に向いている、落ち着かない事に対して、アイコンタクトを図る。手をしっかり握ることも有効である。関わるものが目の前に姿をを表さなくてはならない。そして目的活動に手をゆっくり、予測を促しつつ誘導する。予測を促すには関りを持つものがその方向に目を向けてゆく。アイコンタクトができていれば、前頭葉障害者は介助者の視線を追ってくる。(共同偏視はコミュニケーションの基本で、お互いに”それ”や”あれ”を一緒に見る事である)

 目的活動を手の外側から誘導し成功させるよう導く。

 目的活動が成功することで前頭葉障害者は再び周囲や自己を捉えられるようになる。目的活動場面での起承転結は短い時間に起こることだが、その時間の経験(感覚知覚の過程と運動は)は縮んだり伸びたりして、一日の集約にもなる。拒否や逃避がなく、過緊張が減る。過緊張が減ることで、知覚や運動の範囲が広がり、周囲や自己を捉えることができるようになる。