応用/発展

1.損傷を受けた脳の情報処理能力は低下している 処理速度が遅れている 

2.許容量が低下している

3.感覚と運動を分けて考えない 一元的に捉える

4.大脳の左右半球間の協調

5.中枢神経系と生物として実存する身体

6.人は機械と異なり、動きの支点を変えられる。柔軟性と多様性

以上の観点から中枢性疼痛への関りだけでなく、他のリハビリテーションを効果的に行える

前頭葉障害

 前頭葉は多様な機能を担っている。動機づけ、覚醒を調整する。planning。感覚情報の取捨選択。それらを基に、脳の各組織や身体組織をプランに応じて組織している。その他にも内言による思考、意識。(随意的)注意。ワーキングメモリーなどにも関与している。

前頭葉障害では目的活動において行動や注意を保ち続ける事が難しくなる。言語的指示や誘導に従うことができず、他の刺激に容易に反応し、行動が支離滅裂に陥る。動けない重度な前頭葉障害では抵抗症に陥り、筋活動は同時収縮が目立つ。抵抗症や同時収縮により他動運動に対してstretch paineが起こりやすい。痛みは強く持続する傾向があり、四肢の屈曲拘縮を招く。

 人には生得的に”おやなんだろう反射”がある。”おやなんだろう反射”は外敵や環境の変化に対して生存率を高めるためる機構で、新規の予期しない周囲の変化に対して注意を向ける原始反射がある。

 人は常に目的を持ち続けて存在している。目的を達成するために、不必要な刺激はゲーティングコントロールによって排除される。目的を持ち続ける事をここでは定位とする。

 前頭葉障害では不必要な刺激を排除することができず、新規の刺激に容易に反応してしまう。目的を保持し続けること、定位が難しくなる。

 一方で目的活動に応じて人は身体図式を変える。自転車に乗る身体と椅子に座って本を読む身体とは全く異なる。前頭葉障害ではステレオタイプの神経活動による同時収縮や麻痺などによる身体的阻害因子に引きずられ限定的な姿勢の固定に陥り、身体図式を変えることが難しくなる。

 さらに、我々は周囲のことを”既に捉えている”身の回りに色々な変化が起きても、たいてい驚かない。これから起こることの多くは”予測されている”ためである。前頭葉障害ではこの予測活動が困難になっている。周囲や自己の部分に反応し全体を捉えられない。捉えられていないところの刺激は予期されていなく、たいてい驚き、理解できず、逃避や拒否を引き起こす。

 前頭葉障害への関りでは、予測を促し、注意、定位を保ち続けられるよう援助が必要である。理解が得られるよう、目的と結果が明確な場面を設定する。

 何もしていな時よりも、目的活動の場面で、最も良く自己を捉えられる。周囲のことも同様である。

 言語指示は効果がない。偏った知覚、注意が他に向いている、落ち着かない事に対して、アイコンタクトを図る。手をしっかり握ることも有効である。関わるものが目の前に姿をを表さなくてはならない。そして目的活動に手をゆっくり、予測を促しつつ誘導する。予測を促すには関りを持つものがその方向に目を向けてゆく。アイコンタクトができていれば、前頭葉障害者は介助者の視線を追ってくる。(共同偏視はコミュニケーションの基本で、お互いに”それ”や”あれ”を一緒に見る事である)

 目的活動を手の外側から誘導し成功させるよう導く。

 目的活動が成功することで前頭葉障害者は再び周囲や自己を捉えられるようになる。目的活動場面での起承転結は短い時間に起こることだが、その時間の経験(感覚知覚の過程と運動は)は縮んだり伸びたりして、一日の集約にもなる。拒否や逃避がなく、過緊張が減る。過緊張が減ることで、知覚や運動の範囲が広がり、周囲や自己を捉えることができるようになる。

 

 

Parkinson病

 問題点:Parkinson病では屈曲優位な同時収縮によって、可動性の低下と正しく動きを選択するすることが難しくなる。

 すくみ足では、可動性の低下により、左右への重心移動が難しくなる。重心が片方の下肢に十分に乗る前に、他方の下肢を振り出そうとするため、すくみ足になっている

 本人の歩行リズムやタイミングに合わせて、左右への重心移動が可能となるよう、可動性を高める援助によって、足を交互に振り出すことが可能になる。スムーズに歩けるようになる

 また、大脳基底核の障害により正しい動きを選択できない。特に自発的な動きが難しくなる。これに対し、具体的目的や対象があると、対象との関係で皮質系のplanningによって動きを容易に開始できる

 Parkinson病への関りでは、同時収縮を軽減し可動性を高める必要がある。しかし、同時収縮を軽減することは容易ではない。

 同時収縮に対しては、姿勢の変化によって筋緊張が変化することを利用する

 背臥位では伸筋の緊張が高まり、腹臥位では屈筋群が高まる。側臥位では伸筋と屈筋の両方を高めたり、低くしたりできる。よってゆっくり段階付けて寝返りを援助する。姿勢の変化によって筋緊張を変えてゆく。左右へ寝返り、起き上がる、起き上がってから、またゆっくり寝る、左右へ転がる。その間、四肢体幹に動きを求め可動性を高める。特に体幹の可動性を高める必要がある。腹臥位へなれる程可動性が得られたら最良である

 坐位や立位では、ある対象を空間の特定な位置に援助者が提示し、その対象に向かって手を伸ばし把持してもらう。対象を提示することによって動きの開始を援助する。より伸展、外転方向へreachできるよう段階的に対象の位置を遠ざけてゆく。伸展、外転の動きのよって屈筋群の過緊張を減らし。可動性を高める。加えて伸展、外転方向のみでなく、屈曲、下方向、反対側(右上肢に対して左側)へ手を伸ばしてもらい、伸展外転方向と逆の屈曲内転方向へのreachを交互に行い変換運動を促す。変換運動によって同時収縮をより軽減できる。臥位や坐位から始めて、立位での活動へ段階的に促す。

小脳疾患 失調症

 小脳疾患によりフィードバック機構が障害され、動きをコントロールできなくなる。

フィードバック機構の障害は主に筋緊張を低下させる。相反神経支配による筋と筋間の協調を乱し、四肢体幹の関係性を阻害する。分離運動を阻害する。 

 筋緊張の低下は、筋の反応性を低下させ働きを遅れさす。また、重力に抗する動きが難しくなる

 相反神経の乱れは主動作筋、拮抗筋などの関係性を乱し、関節運動の調節や四肢体幹の関係性を損なう

 これらにより、変換運動障害、測定障害、振戦、共同運動障害、分離運動の障害が起こる

 小脳疾患への関りは、特定な姿勢セットを動き出す前に準備することを援助する。足先から指先まで重力に抗して伸展活動を促す

 

1.まず初めに全身の過緊張を緩め、中間位の姿勢を探し求める

小脳疾患者は低緊張と四肢体幹の揺れに対して、屈筋と伸筋の同時収縮による緊張を強めている。また動きをコントロールできず、日常生活の失敗経験から過緊張に陥っている

小脳疾患者は目的をもって動く時に問題が明らかになる。関りでは一回の変換運動で済む行為から始める。reach、releaseからなる動きが関わりやすい。よって、坐位か立位姿勢の保持から援助して行く

坐位か立位姿勢で最も力が抜ける姿勢を援助するために、関りを持つものは後方から援助する。対象者の背部全面と援助者の体の前面が軽く接触するように位置する。援助者の両腕により対象者の側面を覆い軽く触れる

 小脳疾患者は安定して止まって入れない

対象者の重心の位置や四肢の位置、体幹のアライメントの関係性を少しずつゆっくりと変え、対象者が最も力を抜ける姿勢を探し求める。その姿勢を中間位とする。一度動いたら中間位の姿勢に戻るようにする

2.最終到達肢位の体幹アライメントを動き出す前から準備する

「手に持っている物をテーブルの上に置く」という場面設定で以下、説明したい

テーブルの上に置く物は”しっかりした”手応えのある、やや重い物で、握りやすく、テーブルの上に安定して置き易い物が好ましい

対象をしっかり握るよう促し、上肢全体を屈曲位で後ろに引き止めてもらうよう励ます

次に、物をテーブルの置く位置に手が到達した時に最もふさわしい体幹のアライメントを動き出す前から、中間位の姿勢から段階的に形作る

体幹のアライメントが決まったら、上肢をReachしてもらう。この時、関りを持つものは一緒にReachして、対象者のリーチする腕の外側に軽く接触を維持する。もしくは関りを持つ者が先にテーブルにリーチしあらかじめレールを引く

対象者はテーブルに物を置くreleaseの時に体の重みが腕に乗らないように、リーチした腕で体を支えないように、また上肢体幹の高まった緊張が減らないよう

releaseでは腕が上方へ向かうよう体幹のわずかな伸展、抗重力方向の動きを援助する。

腕をゆっくり体幹に戻す。再び体幹を中間位へ戻してゆく

小脳疾患では小脳の内側と外側のどちらかが損傷を受けるかで症状が異なる。内側では体幹が外側では同側の上下肢に主な障害があらわれる

しかし、共通して、低緊張と相反神経の乱れによって、上下肢と体幹の関係性を動きに開始直前に準備できない

パターンや姿勢、重心の位置によって筋緊張を高めることができる。体幹の緊張の高まりが上肢の動きを支持できるようになる。また、上肢の動きが体幹の緊張を高め、さらに物を握る筋活動が、上肢や体幹の働きに良い影響を与える。

さらに、少しずつ、物を置くテーブルの位置を変えてゆく。内転位から外転位へ、近くからより遠くへ段階的に体幹から離れた位置にしてゆく

もしくは、テーブルに置くものを小さな物にして積み重ねる課題を行う

小さな物を積み重ねる課題で上肢を空間に長い時間、保つようにすることで筋活動を時間的に加重し高める。また動きに正確さを求めることでも緊張を高めたり、分離運動が促通される。この時、援助者の腕は対象者のreachする腕や手背の外側に軽く触れるよう位置に置く

代償的な同時収縮による過緊張と異なる

食事への関り

 中枢神経系疾患は時に、食べることを阻害する

 口腔準備期から嚥下反射が起こり、食道まで食塊が至るまでの各相で問題を起こす

より美味しく、より味わって食べられるよう援助する

その為に、                                          a.咀嚼を援助する

b.上肢による箸やスプーン操作が上手(skillfull)になるように援助する。また手と口(頭頸部)の協調性を促す

a.咀嚼を援助することの効果

解剖学的、神経生理学的観点から、咀嚼を促すことで1.食べ物の味をより感じられる。2.誤嚥の危険性を減らす。3.頭頸部から、体幹の動きを高める。4.人間らしさの再獲得 認知機能の賦活

1.咀嚼によって食べ物と唾液が混ざり、複数の味蕾で受容される科学物質に変わる。舌の異なる部位で異なる味を感じる。咀嚼によって味わうためには食べ物が舌の上で位置が変わり、味を感じることができる。歯ごたえや歯からの振動も味に影響を与える

2.咀嚼によって嚥下に好ましい塊、食塊が作られる、食べ物が口の中でまとまる。咀嚼によって生じる口腔内の圧が段階的に、正しく食塊を咽頭へ運ぶ。咽頭では咀嚼による運動と食塊や味覚による感覚情報によって嚥下反射が促通され正しく起こりやすくなる

3.食べる行為は五感に働かける。欲求や情動、経験記憶にも働きかける。中枢神経系の全階層、全システムが働く行為である。頭頸部に集まる感覚器官は感覚を受容するための反応が準備される。これには動きが伴う。下顎の動きはその構造から頭頸部のコントロールに影響を及ぼす(参考資料?-!)。下顎の動きが直接的に頭頸部の可動性を高める。

4.予測に基づいた、運動。運動から得られた感覚と結果(効果)。この循環が、予測に基づいた結果が得られたとき、人は自己と世界と改めて、正しく捉え直す。加えて食事に含まれる文化的、社会的行為が人間らしさを導いてくれる

b.上肢による箸やスプーン操作が上手(skillfull)になるように援助する。また手と口(頭頸部)の協調性を促す効果

上肢による箸操作、スプーン操作のskillfullな活動を理解しなくてはならない。箸では手指の分離運動が必要とされ、スプーン操作ではスプーンの空間的位置や向きを上肢、前腕、手関節で調整されている。食事を文化、社会的行為となるような操作を援助する。

主菜、副菜の3~4品、それぞれの皿に盛られた様々な食材の一部分を切り取る操作が上肢体幹、頭頸部の可動性と動きを高める。

わずかな動きだが頭頸部が食べ物に向かってゆく

食事では系統発生、個体発生ににおいて口が食べ物に向かってゆく。五感を備えた頭頸部が食べ物に向かってゆく能動性は感覚運動調整(資料?-!)へ大きな影響を与える。

発症初期、重傷者、寝たきり

中枢神経系疾患の片麻痺者、パーキンソン病、誤嚥性肺炎、老衰など多様な疾患にあっても、寝たきりの状態が続くと同じ姿勢におちいる。意識が失われていても防御的姿勢で、上下肢屈曲内転し、体幹ははねじれを伴って反り返る

 唐突で早く、強く行われるオムツ交換や清拭、更衣、ポジショニング等の医療、介護に対する身体反応として典型的な全身の屈曲拘縮に陥る

 

 四肢は屈曲内転するが、対称的でなく非対称な姿勢になる。骨盤帯は回旋し体幹に捻じれが生じる。骨盤帯が右へ回旋しているときは、右体側の右腋窩から右骨盤帯の距離は短縮する。左股関節は右股関節よりも内転内旋が強い肢位になる。

 筋は脊髄の伸張反射によって一定の長さを保つ反応が高まる。また、自己の唾液に咽るなどの呼吸苦による過緊張が全身拘縮を起こす。医療介護者が行う定型的なポジショニングよって拘縮が助長される

 臥位の姿勢変換において四肢を動かすことは理解され、容易であるが、体幹を動かすことに配慮してゆく必要がある。体幹は四肢より可動性が大きく、多様に動く。体幹は四肢と頭頚部の動きに強く影響を及ぼしている関係する

 背臥位で寝ている対象者の片足をゆっくりと外側へ開いてゆく。外転される下肢に対して、骨盤帯は側方挙上し同じ方向へ向く。この時、後傾も起こる

下肢の外転をゆっくり続けると、股関節の制限により抵抗に出会う