上肢機能訓練

脳の障害により麻痺した上肢への関り

上肢の構造

1.上肢は肩、肘、前腕、手関節、手指の働き  肩と肘は操作する対象の空間的位置を決める。 肘、前腕、手関節は上肢で操作する対象の向きを決める。手指は対象その物の操作に関わる。

2.肩は肩甲帯、胸郭を含み体幹の影響を受ける、又は体幹に影響を与える。肘関節は体幹、手指(操作対象)相互の関係に従属的にハイブリッドな働きをする。

3.手指の動きはplanに基づいて対象からの感覚により組織化、修正される

4.上肢の動きはパターン、シナージが利用される

5.道具操作において、利き手は道具と対象の関係を結ぶ。非利き手は道具と自身の体幹、姿勢の関係性を調整する

上肢の動作分析

 上肢外転の初期に肩甲関節窩は後方へ10°変位する。

 上肢の動き、三角筋の活動に先行して腹横筋や多裂筋が働く。上肢の動きが身体に及ぼす影響を中枢神経系は予測し、動揺に対処するために筋活動の順序をplanningしている。

 姿勢の維持のため、上肢を空間で保持するために肩甲帯は運動開始より、より良い位置にセットされる。肩甲関節窩は後方へ10°変位し肩甲帯のセッティングされる。肩甲骨のセッティングがローテーターカフ筋の働きを支える。

 中枢神経系の障害では、この自律的姿勢調節が働きにくくなる。姿勢は動きを失い固定される。肩甲帯は落ちて屈曲固定される。下制、外方、前傾位に変位する。関節窩が前下方を向いたままになる。広背筋や小胸筋、大胸筋、烏口腕筋、上腕二頭筋長頭に過活動と短縮が起こる。肩甲帯の変位がカフ筋の働きを阻害する。麻痺してもなお三角筋や上腕二頭筋の活動が保たれていても、上腕骨頭が動揺し上肢を空間で保持できなくなる。上肢の動きが制限される。

 肩甲骨の位置や動きが上肢の動きに大きく影響する。

 肩甲骨の動きを表現することは難しい。挙上、下制、上方回旋、下方回旋に加えて、肩甲骨が内転、脊柱に近づくと関節窩はよりいっそう外側を向く。肩甲骨が外側、脊柱から離れると関節窩はよりいっそう前方を向く。さらに肩甲骨が胸郭上部に乗ることで前傾が起こり、上方回旋では後傾が組み合わさると考える。

 関節窩が前方へ向き、前傾すれば上腕は内旋しやすい。関節窩が外方を向き、後傾すると外旋が起こりやすくなる。関節窩が外方を向く時、大小菱形筋、前鋸筋の活動が高まり、カフ筋は連合して働きやすくなる。

 手内筋に対し外来筋は前腕に対して斜めに走行する。手指屈筋は上腕外側顆から、手指伸筋は内側顆から起始している。前腕回内外の動きや手関節尺屈、橈背屈に対し筋の長さを保ち、筋収縮の効率を高めている。前腕、手関節の肢位が手に保持する対象の向きを決める。

 肘の屈曲伸展が手に持つ対象の空間的位置を定位する。肘屈曲位では前腕の重さが肩関節に回転負荷となりカフ筋の持続的活動が要求される。カフ筋の持続的活動が上腕骨頭を関節窩への適合を高め、肩関節の動きを保障する。カフ筋の活動が土台となり肩、上腕から前腕の筋連結が促され、上肢の重さがコントロールされる。

 上肢の機能訓練ではリーチ(上肢を伸ばす)、グラスプ(把持)、リリース(離す)練習が繰り返される。肩関節屈曲や挙上の活動を高めることを促すことが多い。

 これより、肩関節カフ筋の働きを高めるよう肘屈曲位で把持した対象の位置や向きを変える練習の方が効果的である。この時、上肢の動きに先行して肩甲帯を挙上内転位にセッティングを援助する。対象の重さと回転する力、前腕が重力に引かれ上腕に回旋を加える力がカフ筋の活動を高める。カフ筋の活動と肩甲帯が良い位置にセッティングされる活動が相互に影響し高め合う。さらに前腕回内外と手関節のコントロールが手指やカフ筋の活動を促通する。

 上肢機能において上肢をより遠くに、より高く動かすことを求めるより、対象を把持する事、対象の向きを変えられること、対象の位置を変えられることの方が実用的であり、体幹に近い所で働きを求める方が日常生活で役立つ。